「さくら横ちょう」
2008年 04月 12日
「さくら横ちょう」
加藤周一 詩
春の宵 さくらが咲くと
花ばかり さくら横ちょう
想出す 恋の昨日
君はもうこゝにゐないと
あゝ いつも 花の女王
ほゝえんだ夢のふるさと
春の宵 さくらが咲くと
花ばかり さくら横ちょう
会い見るの時はなかろう
「その後どう」「しばらくねえ」と
言ったってはぢまらないと
心得て花でも見よう
春の宵 さくらが咲くと
花ばかり さくら横ちょう
春の日本歌曲といえば、
TOP10入りするであろう、この曲。
この詩には何人か作曲されておりますが、
なんだか別世界に迷い込んだような柔らかい曲調と
最後の、花びらがはらはら散っていくようなパッセージが大好きで
やっぱり中田先生のが一番好きなのです。
さて、この曲はよく単品で歌われますが、
本来は、『“マチネ・ポエティク”のによる四つの歌曲』という歌曲集の2曲目です。
私も4月のロビーコンサートではこれしか歌いませんが、
7月20日のリサイタルでは全曲に挑戦します。
3曲目の「髪」も有名ですね。
では、“マチネ・ポエティク”とはなんぞや。
これは昭和17年に、抑圧された時代への反抗として
当時の若者達によって立ち上げられたグループ。
フランス等、西洋のソネット形式をまねて
韻律を持つ詩を日本でも作ってみようとしたのですね。
しかし、ヨーロッパの言葉に比べて韻を踏みにくい日本語では難しく、
戦後すぐ、この若者達は当時の文壇から総スカンをくらうわけです。
結局道を模索中、出口を見つけられないまま、消えていってしまったそうなのですが。
とはいえ、このグループの代表者達は
その後の日本の文壇を引っ張っていく存在となられました。
でも、同じ新しい時代の担い手であった中田喜直は
この試みを面白いと思われたのでしょう。
詩集の中から4つを選んで1つの歌曲集を作りました。
では、このことを踏まえて詩に戻ると
まず、一行5+7で書かれていることはおわかりでしょうか。
例外が1箇所5+6のところがありますね。
そして、行末を見ると、「-to」と「-ou」で終わっていますよね。
春の宵 さくらが咲くと
花ばかり さくら横ちょう
という2行が3箇所に現れ、
その間に挟まれた前後4行ずつを見ると
3行目からは「う」「と」「う」「と」
9行目からは「う」「と」「と」「う」
となっています。
それから、「こゝ」・「あゝ」・「ほゝ」という繰り返し言葉も
あえて用いているのでしょう。
私はこの詩に関してはとってもよくできていると思うんだなぁ。
まぁ、歌を聴くときは、そんな難しいことは忘れてくださって結構です。
これは歌う側のお勉強のお話でした。
どうぞお気楽に、雰囲気をお楽しみください。
そしてこの曲は、内容もとってもよく感じられます。
おそらく、昔、恋人と桜の下をお散歩したのでしょう。
それはきっと花の色のように淡いサクラ色の想い出。
でも、もう再び会うことはないだろう。
世間話をしたところで、どうなるものでもないのだから。
花でも見ようと、今は一人そぞろ歩き。
ふと見上げたところに桜の花びらがはらはら・・・。
風流です、なんとも美しい中田喜直の日本歌曲の世界。
どうぞ、皆様もこの世界を味わいながら春のお散歩をお楽しみください。
皆様の「さくら横ちょう」はどこですか?
加藤周一 詩
春の宵 さくらが咲くと
花ばかり さくら横ちょう
想出す 恋の昨日
君はもうこゝにゐないと
あゝ いつも 花の女王
ほゝえんだ夢のふるさと
春の宵 さくらが咲くと
花ばかり さくら横ちょう
会い見るの時はなかろう
「その後どう」「しばらくねえ」と
言ったってはぢまらないと
心得て花でも見よう
春の宵 さくらが咲くと
花ばかり さくら横ちょう
春の日本歌曲といえば、
TOP10入りするであろう、この曲。
この詩には何人か作曲されておりますが、
なんだか別世界に迷い込んだような柔らかい曲調と
最後の、花びらがはらはら散っていくようなパッセージが大好きで
やっぱり中田先生のが一番好きなのです。
さて、この曲はよく単品で歌われますが、
本来は、『“マチネ・ポエティク”のによる四つの歌曲』という歌曲集の2曲目です。
私も4月のロビーコンサートではこれしか歌いませんが、
7月20日のリサイタルでは全曲に挑戦します。
3曲目の「髪」も有名ですね。
では、“マチネ・ポエティク”とはなんぞや。
これは昭和17年に、抑圧された時代への反抗として
当時の若者達によって立ち上げられたグループ。
フランス等、西洋のソネット形式をまねて
韻律を持つ詩を日本でも作ってみようとしたのですね。
しかし、ヨーロッパの言葉に比べて韻を踏みにくい日本語では難しく、
戦後すぐ、この若者達は当時の文壇から総スカンをくらうわけです。
結局道を模索中、出口を見つけられないまま、消えていってしまったそうなのですが。
とはいえ、このグループの代表者達は
その後の日本の文壇を引っ張っていく存在となられました。
でも、同じ新しい時代の担い手であった中田喜直は
この試みを面白いと思われたのでしょう。
詩集の中から4つを選んで1つの歌曲集を作りました。
では、このことを踏まえて詩に戻ると
まず、一行5+7で書かれていることはおわかりでしょうか。
例外が1箇所5+6のところがありますね。
そして、行末を見ると、「-to」と「-ou」で終わっていますよね。
春の宵 さくらが咲くと
花ばかり さくら横ちょう
という2行が3箇所に現れ、
その間に挟まれた前後4行ずつを見ると
3行目からは「う」「と」「う」「と」
9行目からは「う」「と」「と」「う」
となっています。
それから、「こゝ」・「あゝ」・「ほゝ」という繰り返し言葉も
あえて用いているのでしょう。
私はこの詩に関してはとってもよくできていると思うんだなぁ。
まぁ、歌を聴くときは、そんな難しいことは忘れてくださって結構です。
これは歌う側のお勉強のお話でした。
どうぞお気楽に、雰囲気をお楽しみください。
そしてこの曲は、内容もとってもよく感じられます。
おそらく、昔、恋人と桜の下をお散歩したのでしょう。
それはきっと花の色のように淡いサクラ色の想い出。
でも、もう再び会うことはないだろう。
世間話をしたところで、どうなるものでもないのだから。
花でも見ようと、今は一人そぞろ歩き。
ふと見上げたところに桜の花びらがはらはら・・・。
風流です、なんとも美しい中田喜直の日本歌曲の世界。
どうぞ、皆様もこの世界を味わいながら春のお散歩をお楽しみください。
皆様の「さくら横ちょう」はどこですか?
by musicakurihara | 2008-04-12 12:54 | 曲目解説